kotorigoto

コトリのひとりごと 乳ガンを乗り越えた今、私の体と心に良かったことを検証中

ガンであっても心が「健康」を決める

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2年前の今頃、抗がん剤治療の真っただ中で、5回目の治療が終わった頃だった。

抗がん剤治療を止めたいという私と、何としても助けたいから治療を続けてほしいという主人の思いとぶつかる日々が続いていた。

抗ガン剤でガンが消えるかもしれないが、それ以上に免疫力を上げてくれるはずの健康な細胞までも消していく。

自分の体は自分でしか守れないのに、治療を続けている自分が情けなく苦しかった。


話し合いを続けるうち、以前は頭ごなしに「ダメ」としか言わなかった主人が私の世話を焼いたり家事をしてくれるようになって、様子が変わってきた。

そして6月、あと10回の抗がん剤治療を残し治療を切り上げることができた。

転移している所に痛みがあったがガマンできないほどではない。治療中の苦しさを思えばなんでもないことだ。

自分が決めたやり方での養生生活が始まった。誰にも遠慮せず、自分の養生を最優先する。


養生と同時に、ずっと心に引っかかっていたことをひとつづつ始めた。

お見舞いのお礼をかねて、会いたかった人に会いに行った。会う人ごとにこれまでの感謝の気持ちと、今の状態を伝え、再び会うことを約束した。

その中で、ずっと前から引き合わせたいと思っていた二人がいた。

郡上で50年もの間、自分の畑で育てた藍だけで藍染をされてきた智夫さん。

移住した石徹白で洋品店を営み、藍染に興味を持っていた馨生里さん。


馨生里さんは、この出会いをきっかけに、かねてより考えていたことをやりはじめた。

暮らしているこの郡上の土から布を生み出すという。

畑で藍と綿を育てる。蚕を飼う。糸を紡ぎ草木で染め、藍で染めて織る。

一緒にやりたいという仲間が集まり「手しごと会議」と名付けられた。


布を作る仕事をしてみえる作家の方々の工房を訪ね本物を見せてもらい、実際に教わる機会もいただいた。

月ごとに開く「手しごと会議」で専門家に教わったことを共有し、教えあった。

荒地を畑に戻し、綿の種を蒔き育て、収穫までに糸の紡ぎ方をマスターする者。藍を育て、夏の一番暑い盛りに収穫し藍染用のすくもを準備する者。野原や山で、染められる草木を採り糸染めする者。

皆、自分が興味がある分野で力を発揮し、お互い手を貸しあった。

どの工程も、人手と手間がかかる作業で、毎日の暮らしプラスこの手仕事をすることは「好き」だけでできるって作業ではなかったと思う。


私は自分の養生をしながら、自宅の周りで草木染めの材料を採り糸を染めた。

染めの作業は、自然に体を動かすことができ腕や肩のリハビリにもなった。

そのうち仲間から、郡上産の紡いだ糸が届くようにもなった。この調子なら3年先には藍染ができるはずだと励ましあった。

「手しごと会議」で過ごす時間、家で作業する時間は、私の免疫力をぐんぐん上げてくれた。


この2年過ごしてみて、「健康」ってどんな状態を指すのかと考える。

医者は「ガンがある」ことだけに目を向けて、それ以外の養生は無いも同じ。

昔から「一病息災」というけれど、ガンという病もこれでいいと思う。日々なにかしらやる事があり、必要とされて働いて、周りに感謝しながら、体を労って穏やかにくらせれば、これが健康。


先日、石徹白の馨生里さんの藍畑のマルチがけを手伝いに出かけた。

工房に4つの藍甕が埋められ、三和土が乾くのを待っていた。

今月末に初めての藍建てをするという。