生きる力をくれるもの
織り糸をくくりながら友が貸してくれたDVDを見た。
京都に住む吉岡幸雄さん。お寺などに残っている奈良時代の染められた古い布を、昔の手法で復元されている染色家だ。
赤、黄色、橙、白に染めてある布。
草木染めは、布を液体の染料にドボンと付けて染めるやり方。
絞り染めでは多色染めを見たことがあるが、これは型染めのようなキリッとしたデザイン。
草木染めで多色とはありえない布。
どんな道具をどんな手順で使えばこの布ができるのだろう。
吉岡さんが再現したのは、夾纈(きょうけち)という板締めの手法のひとつだ。複雑すぎて途絶えてしまった技術。
分からないことは古い文献を頼ったり、外国の技術も参考にしやっと復活させた。
昔の職人への挑戦。昔のものの方が良いものがあって、その職人に追いつきたいという。
なんと華やかで静かな色たち。すべてが植物、木、根っこから出す色。潰したり煮出したり発酵させたり。
私の知り合いの藍染作家さんが同じことを言っていたのが印象に残る。
「藍染は紙一枚で作り方を説明できる」
その時々で藍の状態が変わり、記録しても意味がないそうだ。すべて自分でやってみて工夫しながら染めることしかできないと。
私は、草木染めで糸を染め織っている。
趣味程度のものでも、吉岡さんとの共通点があった。
自然からいただく色には力があって、人を和ませ癒すことができるということ。
私はこれまで何度か苦しいことがあったがその度、手しごとに救われてきた。
頭で考えず手元の仕事に集中すると、時間は過ぎ、新しいものが出来上がってくるころには、囚われていた苦しい考え方から抜け出している。
吉岡さん、「染めはおおらかにやるのがいい」とおっしゃる。
日々小さな失敗を繰り返しているからだと。
やっぱり心持ち次第で楽になれますね。